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哲学・思想の専門古書店「星林堂」店主の日々録
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         ただいま

    喧騒の森を駆け抜け
    自縛の殻を破り
    帰ってきた

    独り の 場所

    放り投げていた
    空の仕事をするために
    夕凪の海に風の歌をさがし
    暗闇の中で光を紡ごう

    遠い昔 生きていた
    私に繋がる誰かがみつけたその場所に
    いつか 私の仕事をひっそり納めよう

    遠い未来
    私と繋がっていく誰かにとって
    永遠のカタルシスに
    なるように

                  中谷芳子詩集 『S i ・ o r i 』 扉の詩より

詩人・中谷芳子さんは、私の高校以来の友人であり、敬愛する芸術家の一人です。
彼女の内に潜む深い思想と洗練された芸術性は、30年を超える交流の中で、常に私に新鮮なインスピレーションを与えてくれました。
内面からあふれ出す思いを、決して声高に語るのではなく、うっかりすると聞き逃してしまうくらい静かなモノローグでつぶやく・・・少女時代から変わらない彼女の詩作スタイルです。彼女が誘う深みをゆらゆら沈静していると、時に残酷なほど厳しい自己分析や熱い衝動の礫がカウンターパンチのように飛んできて、思わず痛みを感じてハッと覚醒させられるのです。

『S i ・ o r i』 は5章から構成されています。「戦争を知っている大人たちへ」と題された第1章は、中谷さんの思想を形作る一つの大きな核だと思われます。13歳で原爆で亡くなった叔母様の影を自らに重ね、その声を代弁すること・・・それこそが彼女が時空を超えて届けたい言葉なのでしょう。「十三歳」の詩を読むたび、数年前の8月6日、平和祈念式典でお母様とともに慰霊碑に祈りを捧げていた彼女の姿を思い出します。

もう一つ特筆すべきは、最後に収められている「栞」という詩です。詩集のタイトルにもなっているこの一編は、数年前、私たちの母校である広島基町高校の文化祭で、書道部の生徒さんたちによる書の題材として選ばれました。会場の壁一面に貼られた白紙に、若者らしいのびやかな筆使いで鮮やかに描き出された詩。紙面から今にも飛び立つような勢いにあふれた書は、見る者に爽やかな感動を与えてくれました。書の前にたたずむ私たちは時空を超えて17歳の少女に戻り、そして、ここから未来へと続く物語に思いをはせたのです。

   幾度 それを
   挟んできただろう
   読みかけの頁ばかり増え
   完熟しないまま
   両手いっぱい荷物を抱えているわたし

   物語の続きは
   期待するほど
   おもしろくはないかもしれない

   けれど
   栞が教えてくれる頁が
   人生半ばの
   再スタート地点だ

   久しぶりに手に入れたスニーカーで
   物語の後半を威勢よく
   駆け抜けてみよう
   さわやかに手を振って
   ゴールする日のために

             『S i ・o r i』  「栞」より

中谷芳子さんの珠玉の詩集『S i ・o r i』 をぜひ多くの人に届けたくて、星林堂で販売させてもらうことにしました。
一部1050円、星林堂のサイトから購入できます。

ひとりでも多くの方に彼女の言葉が届きますように。

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